【この記事のポイント】
フランジ付きベアリングとは、外輪の片側につば(フランジ)を設けた深溝玉軸受です。そして、フランジがあることで軸方向の位置決めが容易になり、ハウジング構造を簡略化できます。したがって、取り付けの手間とコストを削減できるため、事務機器や家電、産業機械で広く採用されています。なお、材質は軸受鋼やステンレス鋼が主流ですが、樹脂製も選択肢に入ります。
◇本ページの目次
Toggle1.フランジ付きベアリングの基本構造
まず、フランジ付きベアリングは、通常の深溝玉軸受に「フランジ」を追加した形式です。したがって、構造の違いを理解することで、適切な使い分けができるようになります。
1-1.フランジとは何か
そもそも、フランジとは、外輪の片側に設けられたつば(リム)のことです。具体的には、外輪本体よりも大きい直径を持つ円盤状の突起です。
そして、このフランジがハウジングの端面に当たることで、ベアリングの軸方向位置が自然に決まります。一方、通常のベアリングでは、ハウジング内径に段差(肩)を設けて位置決めします。したがって、フランジ付きであれば、その加工が不要になります。
1-2. 通常のベアリングとの構造比較
そこで、フランジ付きと通常型の違いを整理します。
| 項目 | 通常の深溝玉軸受 | フランジ付き深溝玉軸受 |
|---|---|---|
| 外輪形状 | 円筒形(フラット) | 片側にフランジ(つば)あり |
| 位置決め | ハウジング内径の肩で固定 | フランジがハウジング端面に当接 |
| ハウジング加工 | 段差加工が必要 | 通し穴加工で済む |
| 軸方向の固定 | 止め輪等が必要な場合あり | フランジで自然に固定 |
| 型番の例 | 6001ZZ | F691ZZ(Fがフランジ付き) |
つまり、フランジ付きの最大の利点は、ハウジング加工の簡略化です。しかも、通し穴加工で済むため、加工精度を出しやすくなります。
※ベアリングの種類全般については、「ベアリングの種類と選び方」をご覧ください。
2.フランジ付きベアリングのメリット
フランジ付きベアリングを選ぶことで得られるメリットは複数あります。そこで、設計・製造・コストの各面から確認します。
2-1.取り付け工数の削減
まず、フランジがハウジング端面に当接するため、位置決めが一発で決まります。しかも、止め輪やスナップリングが不要になるケースも多く、部品点数の削減につながります。
したがって、組み立て工程が簡略化されるため、生産効率の向上にも寄与します。
2-2.ハウジング加工の簡略化
次に、通常のベアリングでは、ハウジング内径に段差(肩)を設ける加工が必要です。一方、フランジ付きであれば、精度の高い通し穴加工だけで取り付けが可能です。
ただし、注意点があります。というのも、ハウジング端面の直角度が取り付け精度に直結します。つまり、フランジ面を基準に取り付けるため、端面加工の精度が求められます。
2-3.コンパクト設計への貢献
さらに、フランジ付きベアリングは、軸受ユニット(ピローブロック)を使うほどではないものの、確実な固定が必要な場面で活躍します。そして、ハウジング構造を簡略化できるため、装置全体の小型化・軽量化に貢献します。
3.フランジ付きベアリングの主な用途
フランジ付きベアリングは、小型〜中型の回転部品で広く使用されています。とりわけ、取り付け構造を簡略化したい用途で採用されます。
3-1.事務機器・OA機器
まず、プリンタ、コピー機、ファクシミリなどの紙送りローラやモータ軸受に使われます。つまり、低コスト・省スペースが求められる用途です。したがって、フランジによる位置決めで組み立て効率を高めています。
3-2.家電・民生機器
次に、掃除機、洗濯機、エアコンなどのモータ軸受として採用されています。というもの、量産品のコスト削減と組み立て効率向上が重視される分野だからです。
3-3.産業機械・搬送装置
また、コンベアのローラ軸受や搬送装置のガイドローラに使用されます。そして、止め輪なしで軸方向を固定できるため、振動の多い環境でも安定した取り付けが可能です。
3-4.医療機器・食品機械
さらに、滅菌処理や洗浄にさらされる環境では、ステンレス鋼や樹脂製のフランジ付きベアリングが選ばれます。というのも、フランジ構造により取り付け部品を最小限に抑えられるため、洗浄しやすい設計が可能だからです。
とりわけ食品機械では、グリースの飛散が異物混入の原因になります。しかし、樹脂製のフランジ付きベアリングは無潤滑で使用できるため、この問題を根本から解消できます。
3-5.搬送ローラ・ガイドローラ
そして、搬送ラインのローラ軸受としても多く使用されています。というのも、フランジが軸方向のずれを防ぐため、振動の多い環境でもローラ位置が安定するからです。したがって、通常のベアリング+止め輪の組み合わせよりも、組み立て工数を減らせます。
※過酷環境でのベアリング選定事例については、「金属ベアリングの早期破損を防ぐ!過酷環境における樹脂軸受の耐久性能と選定事例」もご覧ください。
4.材質で選ぶフランジ付きベアリング
フランジ付きベアリングも、材質は使用環境に応じて選定します。なお、基本的な考え方は通常のベアリングと同じです。
4-1.金属製(SUJ2 / ステンレス鋼)
SUJ2(軸受鋼):
一般環境での第一選択肢です。したがって、コストパフォーマンスに優れています。
ステンレス鋼(SUS440C):
水分や薬品にさらされる環境向けです。そのため、医療機器やクリーンルームで多く使用されています。
4-2.セラミック・ハイブリッド
次に、セラミック転動体を使用したハイブリッド型は、高速回転や非磁性が求められる特殊用途で検討されます。ただし、フランジ付きのセラミックベアリングは製品ラインナップが限られるため、メーカーへの確認が必要です。
4-3.樹脂(プラスチック)製 — 取り付け簡略化と耐食性の両立
そして、樹脂製のフランジ付きベアリングは、金属製にはないメリットがあります。
軽量・耐食性:
例えば、POM(ポリアセタール)製のフランジ付き軸受は、95kgまでの荷重に対応可能です。しかも、水中・薬品環境でも腐食の心配がありません。
無潤滑で使用可能:
グリースなしで回転するため、食品機械や医療機器のクリーン設計に適しています。
カスタム対応が容易:
また、樹脂は金属に比べて成形の自由度が高いです。したがって、フランジの形状や寸法を用途に合わせてカスタマイズしやすいという利点があります。その結果、標準にない軸径やハウジング形状にも柔軟に対応できます。
部品の一体化:
さらに、樹脂成形により、フランジ部とベアリング本体を一体で製造できます。つまり、部品点数をさらに削減し、組み立て工数を減らすことが可能です。
※樹脂ベアリングの基本特性については、「樹脂ベアリングとは?金属軸受との決定的な違いと選定の5原則」で解説しています。
※材質別の詳しい比較は「ベアリングの材質を徹底比較|鋼・ステンレス・セラミック・樹脂の特徴と選び方」もご参照ください。
5.フランジ付きベアリングの選定ポイント
フランジ付きベアリングの選定では、通常のベアリング選定に加えて、フランジ特有の注意点があります。
5-1.フランジ寸法の確認
まず、フランジの外径(Df)は、ハウジングの穴径より大きい必要があります。また、フランジの厚さ(Cf)も取り付け構造に影響します。したがって、カタログでフランジ外径と厚さを必ず確認してください。
なお、JIS B 1512-4(外輪フランジ付きラジアル玉軸受のフランジ寸法)で規格が定められています。
5-2.ハウジング端面の直角度
次に、フランジ面がハウジング端面に当接して位置決めを行います。そのため、ハウジング端面の加工精度が回転精度に直結します。というのも、端面の直角度が不十分だと、軸受の傾きが生じて異常摩耗の原因になるからです。
5-3.荷重方向の確認
また、フランジ付きベアリングは、主にラジアル荷重を受ける設計です。一方、アキシアル荷重に対しては、フランジ側からの一方向のみ受けられます。したがって、反対方向のアキシアル荷重が大きい場合は、別途固定方法を検討する必要があります。
5-4.用途別の材質選定ガイド
そこで、材質選定の判断基準を整理します。
| 使用環境 | 推奨材質 | 理由 |
|---|---|---|
| 一般機械・事務機器 | SUJ2(軸受鋼) | コスト最良。標準品が豊富 |
| 水・湿気のある環境 | ステンレス鋼 or 樹脂 | 耐食性が必要 |
| 食品・医療 | 樹脂(POM等) | 無潤滑・異物混入リスク低 |
| 薬品・強酸環境 | 樹脂(PEEK, PPS等) | 金属では腐食が避けられない |
| 軽量化・コスト削減 | 樹脂 | 軽量+成形自由度+部品一体化 |
※ベアリング規格の全体像については、「ベアリング規格を徹底解説|精度等級から呼び番号の見方まで」もご覧ください。
6.よくある質問
6-1.フランジ付きと止め輪付き、どちらを選ぶべき?
フランジ付きは、ハウジング側の加工を簡略化したい場合に適しています。一方、止め輪付きは、ハウジングに溝加工を行う形式です。そして、フランジのような突起がないため、ハウジング外径をコンパクトに保てます。
したがって、取り付けスペースに余裕がない場合は止め輪付き、組み立て効率を優先する場合はフランジ付きが適しています。
6-2.既存の通常ベアリングをフランジ付きに変更できる?
内径・外径・幅が同じフランジ付き製品が存在すれば、置き換えは可能です。ただし、フランジ外径分のスペースがハウジング端面側に必要です。したがって、カタログの寸法表でフランジ外径(Df)を確認してください。
まとめ — フランジ付きベアリング選定の要点
それでは、フランジ付きベアリングの選定で押さえるべきポイントを整理します。
構造の特徴:
外輪片側のフランジで軸方向位置決めができます。しかも、ハウジングの通し穴加工で取り付けが可能です。
メリット:
組み立て工数削減、部品点数削減、ハウジング加工の簡略化。つまり、コンパクト設計に貢献します。
材質選定:
一般環境はSUJ2、耐食性にはステンレス鋼、水中・薬品・食品には樹脂が最適です。とりわけ、樹脂製はカスタム対応や部品一体化が容易という独自の強みがあります。
注意点:
フランジ寸法とハウジング端面の直角度の確認を忘れずに行いましょう。
※コスト削減効果については「樹脂ベアリングでコスト削減は可能か?メリット・デメリット徹底解説」で詳しく紹介しています。
※規格品・カスタム品を含めたBNLの樹脂ベアリング製品一覧、独自の製品特徴、よくあるご質問も併せてご覧ください。






