ベアリングの材質を徹底比較|鋼・ステンレス・セラミック・樹脂の特徴と選び方

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BNLジャパン株式会社

BNLは1970年の創業以来、樹脂ベアリング専門メーカーとして、世界中の産業界にソリューションを提供してまいりました。独自の射出成形技術と長年蓄積されたノウハウを活かし、軽量化やコストダウンといったお客様の課題解決に貢献することが私たちの使命です。

【この記事のポイント】

ベアリングの材質は、大きく「金属」「セラミック」「樹脂(プラスチック)」の3カテゴリに分かれます。中でも、最も一般的なのは高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)です。そのうえで、耐食性が必要ならステンレス鋼、高速・高温ならセラミック、水中・薬品環境なら樹脂が選ばれます。この記事では、まず各材質の特性を比較し、用途に応じた選び方を解説します。

 

1.ベアリングの材質が性能を決める

ベアリングの材質は、耐荷重・耐食性・耐熱性・寿命に直結します。そのため、同じ形式のベアリングでも、材質が異なれば使える環境がまったく変わります。

したがって、設計者にとって「どの材質を選ぶか」は、形式選定と同じくらい重要な判断です。まずは使用環境を正確に把握した上で、最適な材質を選ぶ必要があります。

 

※ベアリングの形式選定については、「ベアリングの種類と選び方」で詳しく解説しています。

2.金属ベアリングの材質と特徴

金属製ベアリングは最も広く使われている材質カテゴリです。用途に応じて、軸受鋼・ステンレス鋼・高速度工具鋼などが使い分けられています。

2-1.高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)— 最も標準的な材質

SUJ2は、JIS G 4805で規定された軸受専用の鋼材です。そして、ベアリング業界で最も広く使われている標準材質です。

 

SUJ2の主な特徴は以下の通りです。

 

  • 硬度が非常に高い(熱処理後HRC 58〜65)
  • 耐摩耗性に優れ、転動疲労に強い
  • 寸法安定性が高く、精密なすきま管理が可能
  • コストパフォーマンスに優れている

 

海外規格ではAISI 52100(アメリカ)やDIN 100Cr6(ドイツ)が同等材です。そのため、グローバルに互換性があります。

 

こうした特性から、一般的な産業機械、自動車、家電、工作機械など、ほとんどの用途でSUJ2が第一選択肢となります。

 

SUJ2の弱点: ただし、耐食性が低いことです。したがって、錆び止め油やグリースで保護しないと、湿気の多い環境では腐食が進みます。

2-2.ステンレス鋼(SUS440C / SUS304)— 耐食性が必要な環境向け

一方、ステンレス鋼ベアリングは、水分や薬品にさらされる環境で使用されます。代表的な材質はSUS440CとSUS304です。

 

SUS440C(マルテンサイト系): 焼入れが可能で硬度を確保できます。SUJ2ほどではありませんが、耐荷重性と耐食性を両立できる材質です。そのため、クリーンルームや真空環境でも使用されます。

 

SUS304(オーステナイト系): 耐食性はSUS440Cより優れます。しかし、焼入れができません。そのため硬度が低く、高荷重の用途には向きません。

 

つまり、ステンレス鋼ベアリングの選定では「耐食性と硬度のバランス」が判断のポイントです。

2-3.高速度工具鋼(SKH4 / M50)— 高温環境向け

300℃を超える高温環境では、SUJ2やステンレス鋼では硬度が低下します。そこで、このような環境では高速度工具鋼が選ばれます。

具体的には、ジェットエンジンやガスタービンの軸受など、極めて過酷な条件での使用が主な用途です。したがって、一般的な産業機械で使用されることはほとんどありません。

2-4.保持器(リテーナ)の材質

軌道輪や転動体だけでなく、保持器の材質も重要です。保持器は転動体を等間隔に保持する部品です。

保持器の材質は、大きく3種類に分かれます。

 

鋼板プレス保持器: SPCCやSPHCなどの冷間・熱間圧延鋼板を打ち抜いて成形します。コストが低く、最も広く使われています。

 

もみ抜き保持器: 一方、高力黄銅(CAC301)や炭素鋼(S25C)から削り出して製造します。こちらは、高速回転や高精度用途に使われます。

 

樹脂保持器: また、ポリアミド(ナイロン)やPEEK等の樹脂で成形します。軽量で自己潤滑性があり、高速回転に適しています。

 

いずれにしても、保持器の材質選定は、使用温度・回転速度・潤滑条件によって決まります。

3.セラミックベアリングの材質と特徴

セラミックベアリングは、金属では対応できない環境で使用される高機能材質です。代表的な素材は窒化ケイ素(Si₃N₄)、ジルコニア(ZrO₂)、炭化ケイ素(SiC)などです。

3-1.セラミックの主な利点

セラミック素材には、金属にない特徴があります。

 

  • 軽量: 鋼の約40%の密度で、高速回転時の遠心力を低減
  • 耐食性: 酸・アルカリに対して高い耐性
  • 非磁性・絶縁性: 磁場や電気の影響を受けない
  • 耐熱性: 高温でも硬度が低下しにくい

3-2.代表的なセラミック素材の比較

セラミックベアリングに使われる素材には、いくつかの種類があります。

 

素材主な特徴適した環境
窒化ケイ素(Si₃N₄)高硬度・軽量・耐熱。最も広く使用高速回転・真空・腐食
ジルコニア(ZrO₂)靭性が比較的高い。研磨が容易汎用セラミック軸受
炭化ケイ素(SiC)耐食性が最も高い強酸・強アルカリ環境
アルミナ(Al₂O₃)コストが低い。電気絶縁性に優れる絶縁用途

 

このうち、窒化ケイ素が最も一般的な選択肢です。特に、腐食性の強い環境では炭化ケイ素が検討されます。

3-3.総セラミックとハイブリッドの違い

セラミックベアリングには、2つのタイプがあります。

 

総セラミック軸受: 軌道輪と転動体の両方がセラミック製です。真空・腐食・高温環境に最も強い構成です。ただし、コストは高くなります。

 

ハイブリッド軸受: 一方、転動体のみセラミック、軌道輪は鋼製です。つまり、セラミックの高速性能と鋼の強度を組み合わせた構成であり、総セラミックよりコストを抑えられます。

3-4.セラミックの弱点

セラミックは硬い反面、衝撃に弱い(脆い)という特性があります。そのため、突発的な衝撃荷重がかかる用途には向きません。また、金属ベアリングに比べてコストが大幅に高くなります。

4.樹脂(プラスチック)ベアリングの材質と特徴

樹脂ベアリングは、金属やセラミックでは対応が難しい環境で力を発揮します。例えば、潤滑剤が使えない環境、軽量化が求められる設計、異物混入を避けたい用途などが代表的です。

4-1.代表的な樹脂素材と特性

樹脂ベアリングに使われる主な素材を比較します。

 

素材耐熱温度(連続)耐薬品性吸水性特徴
PEEK約250℃極小高性能・高単価。寸法安定性に優れる
PPS約220℃極小PEEKに次ぐ高性能。コスト面でやや有利
POM約100℃汎用性が高く、コストパフォーマンスに優れる
UHMWPE約80℃やや大耐摩耗性が高い。食品機械向け
PTFE約260℃極小摩擦係数が最も低い。耐荷重性はやや低い

 

このように、素材ごとに耐熱性・耐薬品性・吸水性が大きく異なります。したがって、使用環境に合わせた素材選定が重要です。

4-2.樹脂ベアリングが選ばれる場面

樹脂ベアリングは、以下のような環境で特に有効です。

 

水中・薬品環境: 金属のように腐食しないため、水処理設備や化学プラントで使用されます。加えて、潤滑剤なしで使える点も大きなメリットです。

 

食品・医療機器: グリースや金属粉の飛散リスクを排除できます。そのため、異物混入防止が求められるクリーン環境に適しています。

 

軽量化・コスト削減: 樹脂は金属より大幅に軽いです。そのため、部品点数の削減や、既製品からのコスト削減にもつながります。

 

※樹脂ベアリングの基本特性については、「樹脂ベアリングとは?金属軸受との決定的な違いと選定の5原則」で詳しく解説しています。

4-3.樹脂ベアリングの弱点

一方で、樹脂は金属に比べて耐荷重性が低い傾向があります。そのため、高荷重・高速回転の用途では金属やセラミックが適しています。また、温度や吸水による寸法変化が金属より大きいため、精密なすきま設計が必要です。

4-4.樹脂素材の選定で確認すべき3つの条件

樹脂ベアリングの素材選定では、以下の3点を必ず確認してください。

 

  1. 使用温度範囲: 連続使用温度が素材の耐熱上限を超えないことが前提です。加えて、回転による発熱も考慮する必要があります。

 

  1. 接触する薬品の種類: 酸・アルカリ・有機溶剤の種類によって、耐えられる素材が変わります。そのため、具体的な薬品名をメーカーに伝えることが重要です。

 

  1. 必要な寸法安定性: 吸水や温度変化による膨張が許容できるかを確認します。なお、寸法安定性が高い素材ほど、スキマを小さく設定できます。

 

これら3つの条件を整理した上でメーカーに相談すると、最適な素材の提案を受けやすくなります。

5.材質別の比較一覧

各材質カテゴリの特性を一覧で比較します。

 

特性軸受鋼(SUJ2)ステンレス鋼セラミック樹脂
耐荷重性
耐食性×○〜◎
耐熱性○(〜150℃)○(〜300℃)◎(〜1000℃)△〜○(素材による)
軽量性××
コスト×
潤滑剤の要否必要必要不要※条件による不要
非磁性×

 

ただし、この表はあくまで傾向です。同じカテゴリでも素材やグレードにより性能は異なります。

 

※ベアリング材質の規格体系については、「ベアリング規格を徹底解説|精度等級から呼び番号の見方まで」もご参照ください。

6.用途別・環境別の材質選定ガイド

材質の選定は、使用環境と要件から逆算して行います。そこで、代表的なケースごとに推奨材質を整理します。

 

使用環境・要件推奨材質理由
一般産業機械SUJ2コスト・性能バランスが最良
水・湿気のある環境ステンレス、樹脂、セラミック耐食性が必要
強酸・強アルカリ樹脂、セラミック金属では腐食が避けられない
食品・医療機器樹脂、セラミック潤滑剤不要・異物混入リスク低
高速スピンドルハイブリッドセラミック軽量転動体で遠心力を低減
300℃超の高温高速度工具鋼、セラミック高温でも硬度を維持
軽量化・部品点数削減樹脂金属比で大幅に軽量
クリーンルーム・真空ステンレス鋼、セラミック、樹脂錆び止め油が使えない

 

このように、一つの要件だけでなく、複数の条件を組み合わせて判断することが大切です。したがって、迷った場合は、メーカーの技術担当への相談をおすすめします。

 

※過酷環境でのベアリング選定事例については、「金属ベアリングの早期破損を防ぐ!過酷環境における樹脂軸受の耐久性能と選定事例」もご覧ください。

7.まとめ — ベアリング材質選定の要点

最後に、ベアリングの材質選定で押さえるべきポイントを整理します。

 

標準はSUJ2: 一般環境ではSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)が最もコストパフォーマンスに優れます。したがって、まずSUJ2で対応できるかを検討してください。

 

環境で材質が変わる: 具体的には、耐食性にはステンレス鋼、高速・高温にはセラミック、水中・薬品・食品には樹脂が適しています。

 

樹脂は「規格外」の強み: 金属ベアリングがJIS規格の枠内で対応するのに対し、樹脂ベアリングは環境に合わせた素材と設計でカスタム対応できます。つまり、潤滑剤不要・軽量・耐薬品性という独自のメリットがあります。

 

コスト削減の視点: ただし、初期費用だけでなく、メンテナンス頻度や交換サイクルを含めたTCO(総保有コスト)で比較することが重要です。樹脂ベアリングの導入コストについては、「樹脂ベアリングでコスト削減は可能か?メリット・デメリット徹底解説」で詳しく紹介しています。

 

以上を踏まえて、使用環境を正確に把握し、最適な材質を選定しましょう。

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