【この記事のポイント】
ベアリング(軸受)の規格は、JIS(日本産業規格)とISO(国際標準化機構)で体系化されています。中でも、設計者が押さえるべき基本規格は3つです。つまり、「JIS B 1512(寸法)」「JIS B 1514(精度)」「JIS B 1518(寿命)」を覚えましょう。この記事では、まず精度等級の違いや呼び番号の読み方を解説します。さらに、JIS規格の対象外となる樹脂ベアリングの選定基準も紹介します。
◇本ページの目次
Toggle1.ベアリング規格とは?設計者が知るべき全体像
ベアリングの規格は、製品の互換性と品質を保証する共通ルールです。規格があるからこそ、メーカーが異なっても同じ寸法・精度のベアリングを使えます。したがって、設計者にとって規格の理解は、正しい選定の第一歩といえます。
1-1.ベアリング規格の役割(なぜ規格が必要か)
ベアリングの規格が果たす役割は、大きく3つあります。
まず1つ目は「互換性の確保」です。規格により主要寸法が統一されています。そのため、同じ呼び番号であればメーカーを問わず交換が可能です。
また、2つ目は「品質基準の明確化」です。精度等級が規定されることで、用途に応じた適切な軸受を選定できます。
そして、3つ目は「国際的な流通の円滑化」です。JIS規格はISO規格に準拠しています。したがって、海外メーカーの製品とも寸法の互換性があります。
※そもそも樹脂ベアリングと金属ベアリングの基本的な違いから知りたい方は、まず「樹脂ベアリングとは?」をご覧ください。
1-2.JIS規格とISO規格の関係
日本のベアリング規格はJIS(日本産業規格)で定められています。そして、JISは国際規格であるISOに準拠して作られています。
つまり、JIS規格に適合した軸受は、ISO規格にも適合するということです。そのため、海外製品を採用する場合でも、ISO準拠であれば寸法の互換性は確保されます。
なお、JIS以外にも各国で独自の規格名称が使われています。例えば、アメリカのANSI/ABMA、ドイツのDIN、イギリスのBSなどが代表的です。ただし、いずれもISO規格との整合が進んでいます。
※ベアリングの種類や基本的な分類については、関連記事「ベアリングの種類と選び方」で詳しく解説しています。
2.押さえるべき3つの基本JIS規格
ベアリングに関するJIS規格は30以上ありますが、設計実務で特に重要なのは3つです。具体的には、「寸法」「精度」「寿命」の3分野を押さえれば、選定に必要な情報はほぼそろいます。
2-1.JIS B 1512 — 主要寸法(内径・外径・幅)
JIS B 1512は、ベアリングの主要寸法を規定した規格です。なお、対応する国際規格はISO 15です。
ここで定義される主要寸法は、以下の4つです。
- d(内径): 軸を通す内輪の直径
- D(外径): ベアリング外輪の直径
- B(幅): ベアリングの厚み
- rs(面取寸法): 内輪・外輪の角の丸み
この規格は1部〜6部に分かれています。具体的には、1部はラジアル軸受、2部はスラスト軸受、3部は円すいころ軸受をそれぞれ規定しています。
2-2.JIS B 1514 — 精度等級と公差
JIS B 1514は、ベアリングの寸法精度と回転精度の許容差を定めた規格です。こちらも、対応する国際規格はISO 492です。
精度等級は0級を基準として、6X級、6級、5級、4級、2級の6段階があります。そして、数字が小さくなるほど精度が高くなります。
一般的な産業機械では0級(普通級)で十分です。一方で、工作機械のスピンドルなど高精度が求められる用途では、4級や2級が使用されます。
2-3.JIS B 1518 — 定格荷重と寿命計算
JIS B 1518は、ベアリングの定格荷重と寿命の計算方法を規定しています。この規格に対応する国際規格はISO 281です。
メーカーのカタログに記載されている「基本定格荷重」は、この規格に基づいて算出されたものです。そのため、設計者はこの数値を使って、使用条件に応じた軸受寿命を計算します。
寿命計算の基本式はL10寿命(基本定格寿命)と呼ばれています。つまり、これは同一条件で使用した軸受の90%が疲労はく離を起こさない総回転数を示す指標です。
3.ベアリングの精度等級(0級〜2級)を理解する
ベアリングの精度等級は、用途に応じた適切な製品を選ぶための重要な基準です。等級が高いほど、寸法精度・回転精度ともに厳しい基準が適用されます。
3-1.各等級の違いと用途の対応表
| 等級 | 精度レベル | 主な用途 |
|---|---|---|
| 0級 | 普通精度 | 一般産業機械、ポンプ、ファン |
| 6級 | やや高精度 | 中精度の回転機器 |
| 5級 | 高精度 | 工作機械、精密機器 |
| 4級 | 超高精度 | 高速スピンドル、精密計測機器 |
| 2級 | 最高精度 | ジェットエンジン、超精密工作機械 |
0級は最も普及している等級です。実際、一般的な使用環境では0級で十分な精度が確保できます。事実、流通しているベアリングの大半は0級です。
ただし、精度が上がるほど、周辺部品(シャフト、ハウジング)にも高い加工精度が要求されます。つまり、ベアリング単体を高精度にしても、取り付け部品の精度が伴わなければ本来の性能は発揮できないということです。
3-2.JIS・ISO・ABEC等級の対比表
日本のJIS等級は、国際規格のISOやアメリカのABECと対応関係があります。したがって、海外メーカーの製品を選定する際は、この対比を確認してください。
| JIS | ISO | ABEC |
|---|---|---|
| 0級 | P0 | ABEC 1 |
| 6級 | P6 | ABEC 3 |
| 5級 | P5 | ABEC 5 |
| 4級 | P4 | ABEC 7 |
| 2級 | P2 | ABEC 9 |
JIS 0級とISO P0、ABEC 1はほぼ同等の精度水準です。そのため、メーカーカタログでABEC表記を見かけた場合は、この表で対応するJIS等級を確認できます。
※ベアリングの選定方法について詳しくは、「ベアリングの選定時に抑えるポイント」をご覧ください。
4.呼び番号(型番)の読み方
ベアリングの呼び番号は、製品の仕様を数字とアルファベットで表した識別コードです。つまり、呼び番号を正しく読めれば、型番だけで軸受の種類やサイズを把握できるということです。
4-1.基本番号の構成(形式番号・直径系列・内径番号)
呼び番号の基本部分は、3つの要素で構成されています。
- 形式番号(先頭の数字) ベアリングの種類を表します。例えば、「6」は深溝玉軸受、「7」はアンギュラ玉軸受、「N」は円筒ころ軸受です。
- 直径系列番号(2桁目) 同じ内径に対する外径サイズの区分を示します。具体的には、7→8→9→0→1→2→3→4の順に外径が大きくなります。
- 内径番号(下2桁) 内径寸法を示す数字です。内径番号04〜96の範囲では、番号×5が内径寸法(mm)になります。
例えば「6205」の場合は、以下のように読み取れます。
- 6 → 深溝玉軸受
- 2 → 直径系列2(標準サイズ)
- 05 → 内径25mm(05×5=25)
ただし、内径番号00〜03は例外です。具体的には、00=10mm、01=12mm、02=15mm、03=17mmと個別に定められています。
4-2.補助記号の読み方(シール・すきま・精度等級)
基本番号の後ろに付く補助記号は、シールドの種類や内部すきまなどの仕様を示します。
シール・シールド記号:
- ZZ:両側鋼板シールド(非接触)
- LLU(またはDD):両側ゴムシール(接触型)
- Z:片側シールド
内部すきま記号:
- C3:普通より大きいすきま
- C4:C3よりさらに大きいすきま
- 記載なし:普通すきま
精度等級記号:
- P6:6級精度
- P5:5級精度
- 記載なし:0級(普通精度)
例えば「6205ZZC3/P6」は、深溝玉軸受・内径25mm・両側シールド・C3すきま・6級精度を意味します。
5.樹脂ベアリングと規格 — JIS規格の「対象外」を知る
ここまで解説したJIS規格は、主に金属製(鋼製)ベアリングを前提にしています。一方で、樹脂(プラスチック)ベアリングは、JIS規格の適用対象外です。したがって、この違いを知っておくことは、特殊環境での選定において重要です。
5-1.なぜ樹脂ベアリングはJIS規格に当てはまらないのか
JIS規格の精度等級や許容差は、金属の物性を前提に設計されています。具体的には、温度変化や吸水による寸法変化がごくわずかであることが前提です。
一方、樹脂ベアリングは環境の影響を受けやすい特性があります。例えば、温度変化による膨張・収縮が金属より大きく、素材によっては吸水による寸法変化も生じます。
そのため、金属ベアリングと同じ公差基準をそのまま適用することができません。結果として、樹脂ベアリングでは、素材ごとに独自のスキマ設計が必要になります。
※樹脂ベアリングの基本特性については、「樹脂ベアリングとは?金属軸受との決定的な違いと選定の5原則」で詳しく解説しています。
5-2.樹脂ベアリングの精度設計(スキマ・寸法安定性の考え方)
樹脂ベアリングメーカーは、素材ごとの特性に合わせた独自の精度管理を行っています。
具体的には、寸法安定性の高い素材の順に並べると、PPS、PEEK、POM、UHMWPE、PTFEとなります。例えば、PEEKやPPS製のベアリングはスキマ約50μm程度に抑えられます。一方、UHMWPE製では約200μm程度のスキマが設定されます。
このスキマ設計は、回転中の発熱や使用環境の温湿度を考慮して決められています。つまり、スキマが小さすぎると回転不良を起こし、大きすぎるとガタつきの原因になるということです。
このように、金属ベアリングのように「JIS 0級相当」といった共通指標はありません。そのため、樹脂ベアリングの選定では、素材特性とスキマ設計の両面からメーカーと相談することが重要です。
※各素材(PEEK・POM・PTFE・UHMWPE)ごとの耐熱性・耐薬品性・許容荷重の詳細な性能マトリックスは「プラスチックベアリングの種類と用途【素材別比較】」で解説しています。
5-3.特殊環境で「規格品が使えない」ケースと代替手段
金属製の規格品ベアリングが適さない使用環境があります。代表的なケースは、以下の通りです。
水中・薬品環境: 金属ベアリングは錆びや腐食のリスクがあります。しかも、ステンレス鋼でも強酸・強アルカリ環境では劣化が避けられません。その点、樹脂ベアリングは耐薬品性に優れた素材を選べるため、こうした環境での有力な代替手段となります。
食品・医療機器: 異物混入リスクの低減が求められる環境では、潤滑剤不要の樹脂ベアリングが適しています。なぜなら、金属粉やグリースの飛散リスクを排除できるからです。
軽量化が必要な用途: 樹脂ベアリングは金属比で大幅に軽量です。そのため、部品点数の削減やコスト削減にもつながります。
※過酷環境でのベアリング選定事例については、「金属ベアリングの早期破損を防ぐ!過酷環境における樹脂軸受の耐久性能と選定事例」もご参照ください。
6.規格品 vs カスタム品 — どう使い分けるか
ベアリングの選定では、まず規格品で対応できるかを検討します。そのうえで、規格品で要件を満たせない場合に、カスタム品(特注品)を検討する流れが一般的です。
6-1.規格品で十分なケース・規格品では対応できないケース
規格品が適するケース: 一般的な回転速度・荷重条件の産業機械であれば、規格品で十分対応できます。しかも、規格品は在庫が豊富で、短納期・低コストで調達が可能です。加えて、入手性の良さも大きなメリットです。
規格品では対応が難しいケース: 一方で、以下のような条件では、規格品の選択肢がなくなる場合があります。
- 特殊な寸法(標準サイズに合わない軸径やハウジング)
- 通常と異なる素材要件(耐薬品性、非磁性、絶縁性など)
- 特殊環境(水中、高温、クリーンルームなど)
- 軽量化・部品点数削減を目的とした設計変更
6-2.カスタムベアリングの選択肢と相談先
カスタムベアリングの設計には、素材選定・スキマ設計・耐荷重計算など専門的な知識が必要です。そのため、自社の要件を整理した上で、メーカーの技術担当に相談するのが最も確実です。
特に樹脂ベアリングのカスタム対応では、使用環境(温度範囲、接触する薬品、荷重条件)を具体的に伝えることが重要です。そうすることで、メーカー側で最適な素材とスキマ設計を提案してもらえます。
※カスタム品の導入によるコスト面の影響については、「樹脂ベアリングでコスト削減は可能か?メリット・デメリット徹底解説」で詳しく解説しています。
7.まとめ — ベアリング規格の要点整理
ベアリングの規格は、設計者が正確な選定を行うための共通基盤です。最後に、要点を整理します。
基本JIS規格は3つ: JIS B 1512(寸法)、JIS B 1514(精度)、JIS B 1518(寿命)です。この3つを押さえれば、選定に必要な情報がそろいます。
精度等級は用途で選ぶ: 一般機械は0級で十分です。一方、高速・高精度用途では5級以上を検討してください。
呼び番号で仕様が分かる: 形式番号・直径系列・内径番号の3要素が基本です。さらに、補助記号でシールドやすきまも読み取れます。
樹脂ベアリングはJIS規格外: 金属と異なる精度管理が必要です。その点、特殊環境では規格品に代わる有力な選択肢になります。
以上を踏まえて、規格の理解を深め、用途に最適なベアリングを選定しましょう。
※規格品・カスタム品を含めたBNLの樹脂ベアリング製品一覧、独自の製品特徴、よくあるご質問も併せてご覧ください。






